親などから借地権(土地を借りて建物を持つ権利)を相続したとき、「相続税はかかる?」「名義変更は?」「売れるの?」と迷いがちです。
このページでは、借地権を相続したときの相続税評価と特例、名義変更(相続登記)の書類と地主への連絡の文例、相続後の選択肢、売却の進め方と注意点を、公的機関の情報をもとにまとめます。
借地権も相続財産になる
まず押さえる3点
- 被相続人が借りていた土地の借地権も相続財産です。相続人がそのまま引き継げます。
- 相続による取得は「譲渡」ではないため、地主の承諾も承諾料も原則不要です(名義書換料を求められても法的義務ではありません)。
- ただし、借地上の建物は相続登記が必要です(後述)。
借地権の多くは賃借権で、相続では地主の承諾は要りません。
一方で、その後に第三者へ「売る」ときは地主の承諾(+承諾料)が必要になる点は、相続とは分けて考えましょう。
借地権の相続税評価(いくら?)
借地権の相続税評価額は、次の式が基本です。
計算の基本
- 借地権の評価額 = 自用地評価額(更地評価)× 借地権割合
- 借地権割合は国税庁の路線価図の記号(A〜G=90%〜30%)で分かります。
- 定期借地権は残存期間に応じた別の方法で評価します。
👆 表は横にスクロールできます
| 記号 | A | B | C | D | E | F | G |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
計算例(路線価「300D」・土地100㎡)
- 更地評価 = 30万円 × 100㎡ = 3,000万円
- 借地権(D=60%)= 3,000万円 × 60% = 約1,800万円
注意
- これは相続税を計算するための評価額です。実際に売れる価格(特に第三者売却・業者買取)は、これより低くなることが多い点にご注意ください。
- 相続税がかかるかは、遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかなどで決まります。具体的な税額は税理士・税務署にご確認ください。
相続税を軽くする特例・払えないとき
小規模宅地等の特例は借地権にも使える
自宅の敷地に使っていた土地の評価を大きく下げる小規模宅地等の特例は、国税庁が「土地の上に存する権利」も対象としているため、借地権にも使えます。
自宅の敷地(特定居住用)の場合
- 330㎡まで、評価額を80%減らせます。
- 使える人…配偶者/亡くなった人と同居していた親族(申告期限まで住み続け、持ち続けることが条件)/条件を満たす持ち家のない別居の子(いわゆる家なき子)。
計算例(上の例の借地権・評価額1,800万円)
- 80%減で、評価額は360万円になります。
- 特例で相続税がゼロになっても、相続税の申告は必要です。
相続税が払えないとき
- 期限…申告と納付は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
- 延納(分割払い)…税額が10万円を超え、一度に払うのが難しいときは、担保を出して分割にできます。
担保にできるのは、国債・地方債、確実な有価証券、土地、保険をかけた建物、確実な保証人などです(相続した不動産を担保にすることが多い)。
延納する税額が100万円以下で期間が3年以下なら、担保は不要です。
申告期限までに申請が必要で、利子税がかかります。 - 売って納める…相続税の申告期限から3年以内に借地権を売ると、払った相続税の一部を取得費に足せる特例があります(売却の税金を抑えられます)。
名義変更(相続登記)の手続き
手続きのポイント
- 借地上の建物は、被相続人名義から相続人へ相続登記が必要です(2024年4月から義務化・取得を知って3年以内・怠ると過料の対象)。
- 借地権(賃借権)自体は登記されていないことが多く、建物の登記が借地権の対抗力になります。
- 誰が相続するかは遺産分割協議書で決めます。
地主への対応
- 相続では承諾・承諾料は不要ですが、地代の支払先・契約者が変わる連絡はしておくと、その後の関係がスムーズです。
- 契約書が見つからない場合は、地代の領収書や過去のやり取りを手がかりに、早めに整理しましょう。
相続登記の必要書類と費用
主な必要書類
- 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本と住民票の除票
- 相続する人の戸籍謄本・住民票
- 遺産分割で決めた場合は遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書
- 建物の固定資産評価証明書(登録免許税の計算に使います)
- 登記申請書
費用の目安
- 登録免許税=建物の固定資産税評価額×0.4%。
たとえば評価額300万円の建物なら1万2,000円です。
相続税の評価額や小規模宅地等の特例とは関係なく、市区町村の固定資産課税台帳の価格で計算します。 - 司法書士に頼む場合は、別に報酬がかかります(事務所によって違います)。
- 借地権(賃借権)そのものを登記している場合は、その名義も変えます。
地主への連絡の文例
相続に地主の承諾は要りませんが、地代を払う人が変わるので、書面で知らせておくと安心です。
次の文例を、事情に合わせて書き換えて使ってください。
文例(郵送・控えを保管)
〇〇様
いつもお世話になっております。
〇〇市〇〇町〇番の土地をお借りしていた父〇〇が、〇年〇月〇日に亡くなりました。
借地契約は、相続人の私〇〇が引き継ぎます。
今後の地代は私からお支払いします。
お支払い方法に変更がなければ、これまでどおりお振り込みいたします。
ご不明な点がありましたら、下記までご連絡ください。
〇年〇月〇日 住所・氏名・電話番号
連絡のときの注意
- 名義書換料や承諾料を求められても、相続では払う法的な義務はありません。
- 新しい契約書への書き換えを求められたら、地代や期間などの条件が変わっていないか確かめてから署名しましょう。
相続後の4つの選択肢
👆 表は横にスクロールできます
| 選択肢 | 向いているケース/注意 |
|---|---|
| 自分で住む・使う | そのまま活用。地代・更新料・建物の維持費は続く |
| 人に貸す | 家賃収入を得る。契約内容で転貸に地主承諾が必要な場合あり |
| 売る | 地主・第三者・専門買取のいずれか(後述) |
| 地主に返す | 更地にして返す費用(解体費)がかかることがある |
放置に注意
- 使わないまま持ち続けると、地代・更新料・建物の管理だけがかかり続けます。
- 次の相続で権利者が増えるとさらに複雑になります。早めの判断がおすすめです。
兄弟など共有相続の注意
共有はトラブルのもと
- 兄弟など複数人で共有相続すると、売却に全員の同意が必要になり、話がまとまらないことがあります。
- 解決策…代償分割(1人が取得し他へ現金)/換価分割(売って現金で分ける)/自分の持分だけ売る。
共有のまま放置すると次の相続で権利者が増え、収拾がつかなくなります。
持分だけを手放したい場合は共有持分の売却も参考にしてください。
相続放棄という選択肢
こんなときに検討
- 地代の滞納や老朽建物の負担が大きく、引き継ぎたくない場合の選択肢です。
注意点
- 借地権だけを放棄することはできません。預貯金などプラスの財産もすべて放棄になります。
- 相続を知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。
- 放棄しても、現に占有していた財産の管理義務が残る場合があります。判断は専門家に相談を。
こんなときは?(遺贈・相続人がいない・無償で借りていた)
相続人以外に遺贈されたとき
遺言で、孫や内縁の配偶者など相続人以外に借地権を渡す「遺贈」は、譲渡にあたるため地主の承諾が必要です。
承諾が得られないときは、裁判所に地主の承諾に代わる許可を求める手続き(借地非訟)もあります。
ただし、許可の条件として承諾料にあたるお金の支払いを命じられることが多く、地主が自分で買い取ると申し出ることもできます。
なお、相続人が相続する場合は、地主は断ることも、相続を理由に地代や条件を変えることもできません。
相続人がいないとき
相続人が全員相続放棄した場合などは、地主や債権者などの申立てで、家庭裁判所が相続財産清算人を選びます。
清算人が建物と借地権を売るなどして整理し、最後に残った財産は国のものになります。
親の土地を無料で借りていた(使用貸借)
地代を払わずに親の土地に子が家を建てていた場合は、借地権ではなく使用貸借です。
相続税では借地権の評価はゼロで、土地は持ち主の財産として更地の評価になります。
また、使用貸借は原則として借りている人が亡くなると終わる(民法597条3項)ため、借りていた子が先に亡くなったときは注意が必要です。
親(貸していた人)が亡くなったら
- 土地は自動的に家の持ち主のものにはなりません。
親の遺産として、相続人全員の遺産分割で誰がもらうかを決めます。 - 兄弟が土地を相続すると、自分の家は「兄弟の土地を無料で借りて建っている」状態が続き、後でもめる原因になります。
- 親が元気なうちに、遺言で「家の持ち主が土地を相続する」と決めておくのが確実です。
相続した借地権を売る方法・流れ
相続した借地権も売却できます。
まず名義(建物)を相続登記で整理してから、売却へ進むのが一般的です。
👆 表は横にスクロールできます
| 売り先 | 特徴 |
|---|---|
| 地主に売る | 手続きが早く承諾料も不要。価格は低めになりやすい |
| 第三者に売る | 高値を狙えるが、地主の譲渡承諾(+承諾料=借地権価格の約10%が目安)が必要 |
| 専門買取業者に売る | 承諾交渉ごと任せられ早い。価格は市場より低め |
税の特例(取得費加算)
- 相続した借地権を相続税の申告期限から3年以内に売ると、相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を抑えられる場合があります。
売り方・相場・承諾料の詳細は借地権・底地の売却で詳しく解説しています。
借地権の売却は業者選びで結果が大きく変わります。
現況のまま早く買い取る会社から、底地専門・弁護士連携の会社まで、借地権・底地の売却・買取おすすめ比較【4社】で立場・目的別にまとめています。
よくあるトラブル
つまずきやすい点
- 地主と疎遠で契約書が見つからない/地代や条件が分からない
- 兄弟で意見が割れ、共有のまま塩漬けになる
- 老朽建物・再建築不可などで買い手がつかない
- 地主から高額な名義書換料を求められる(法的義務ではありません)
こうしたケースは、権利調整に慣れた専門の買取業者や専門家に早めに相談するのが現実的です。
相続が起きてからではなく、親が認知症などで判断能力を失うと、預貯金の引き出しや不動産の売却・活用ができなくなり(資産凍結)、いざというときに手続きが止まってしまうことがあります。
元気なうちに家族信託で財産の管理を家族に託しておくと、こうした凍結を避けやすくなります。
「うちの親も高齢で心配」という方は、専門家に無料相談して備えを検討しておくと安心です。
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よくある質問
Q. 借地権の相続に地主の承諾は必要ですか?
ただし第三者へ売る際は承諾(+承諾料)が必要になります。
Q. 借地権の相続税評価はどう計算しますか?
借地権割合は国税庁の路線価図の記号(A〜G=90%〜30%)で分かります。
Q. 借地権を相続したら名義変更は必要ですか?
Q. 借地権だけ相続放棄できますか?
相続を知って3か月以内に家庭裁判所へ申述します。
Q. 相続した借地権は売れますか?
申告期限から3年以内なら取得費加算の特例で税負担を抑えられる場合があります。
Q. 兄弟で相続した借地権を売るには?
代償分割・換価分割のほか、自分の持分だけを売る方法もあります。
Q. 相続したことを地主に連絡する必要はありますか?
本文の文例を書き換えて使えます。
Q. 借地権に小規模宅地等の特例は使えますか?
使うには相続税の申告が必要です。
Q. 相続したら更新料を払う必要がありますか?
更新の時期が来たら、契約の内容どおりに対応します。
まとめ
ポイント
- 借地権も相続財産。相続に地主の承諾・承諾料は原則不要
- 相続税評価は「更地評価×借地権割合」。売却価格とは別
- 自宅の敷地なら小規模宅地等の特例で評価を80%減らせる
- 建物の相続登記が必要(2024年義務化)。地主には書面で連絡を
- 共有相続はトラブルのもと。売る・分ける・持分売却を早めに検討
- 売るなら名義整理→専門業者に相談。取得費加算の特例も
参考・出典(公的機関)
本記事は公的機関の情報や各社の公開情報をもとに編集部が作成しています。
制度・法令は改正される場合があり、内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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